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事業年度を決める時に検討すべき5つの事項
目次
事業年度とは?
「事業年度」とは、経営成績や経理の状況などを明らかにする目的で、決算をするために設けた期間のことです。そして、その期間の最終日のことを「決算日」という言い方をします。
事業年度は、1年以下で決めなければなりません。したがって、半年を1事業年度とすることも可能です。しかし、決算作業と申告などはかなり大変な作業ですので、通常は1年間を事業年度とします。この事業年度の最終日を「決算日」と言います。つまり、事業年度が1年間で決算日が3月31日とした場合、この場合の事業年度は、4月1日~3月31日ということになります。
また、事業年度を1年間として、その中で経営管理のために毎月、四半期ごと、半期ごとで決算を行うのは会社の自由となります。
【参考】決算日は、必ず末日にしなければならないことはない。
会社の決算日というと「3月31日」とか「12月31日」など、月の末日をイメージする方が多いかもしれませんが、必ずしも末日である必要はありません。「20日」や「5日」といった決算日でも構わないのです。例えば、イオングループの各会社などは2月20日を決算日にしている会社が多いようです。ただ、通常末日のほうが、会計処理がやり易いので末日になっている会社が多いようです。
事業年度を決める時に検討すべき5つの事項
さて、この事業年度ですが、決める際には以下の5つの観点を検討してから決定して下さい。
- 消費税免税の期間を長くする
- 資金繰りの重点を置く
- 在庫高が少ない時期を選ぶ
- 需要のピークに合わせる
- 需要のピーク前に決算期を迎える
消費税免税の期間を長くする
消費税には事業者免税点制度というものがあります。
この「消費税の事業者免税点制度」とは、法人の場合、その事業年度の前々事業年度の課税売上高が1,000万円未満の場合、消費税の課税が免除されるという制度です(但し、資本金1,000万円以上の会社には適用されません)。
つまり、新しく設立した会社は1期目も2期目も前々事業年度がないわけですから、2期間は事業者免税点制度の適用を受け、消費税の課税が免除されます。ですので、第1期の期間をいかに長くするかによって、支払う消費税の額も変わってくるということになります。
もう少し分り易く説明しますと、例えば、1月に会社を設立して、その会社の決算月が3月だったとします(1月15日に設立した会社の事業年度が「4月1日~翌年の3月31日」の場合ということです)。そうすると、第1期の期間はわずか3ヶ月足らずということになります。こうなると、消費税の免税期間は2期なので、免税期間は第1期の3ヶ月+第2期の12カ月=約15ヶ月ということになります。
これに対して、1月に会社を設立してその会社の決算月が12月(1月15日に設立した会社の事業年度が「1月1日~12月31日」の場合ということです)ということになると、第1期の約12カ月+第2期の12カ月で、免税になる期間は約24ヶ月ということになります。
このように同じ1月の会社設立であっても、決算月を3月にするか12月にするかによって、約9か月分の消費税分の金額が利益になるかならないかが変わってしまうということになります。ですので、第1期をなるべく長く取れるように事業年度を設定することが、消費税の免税期間を長く取るためには必要だということになります。
資金繰りの重点を置く
企業にとって、資金繰りというのは非常に重要なものです。それは、たとえ利益が出たとしても、資金繰りが途絶えてしまったら事業を継続していくことが出来ないからです。そして、決算月をいつにするかによって、この資金繰りに大きく影響を及ぼす場合があります。
決算を迎えると、法人税や住民税は、原則として決算日から2ヶ月以内に納税する必要があります。また、消費税も同様に決算日から2ヶ月以内に納税しなければなりません。これは、企業にとっては大きな資金の支出となります。
こんな時期に、他にも大きな資金を支出しなければならないとしたら、どうでしょうか?一気に、手持ちの資金が少なく、いや、枯渇する場合もあり得るかもしれません。なので、毎年固定的に大きな資金の支出が予測される時期と決算月をずらしておくという考え方が出てくるわけです。
例えば、ボーナスなどを支給する7月や12月は、大きな資金の支出となるので、この時期と納税時期が重ならないようにする、というようなことです。
納税時期が決算月から2ヶ月以内であることを考えると、7月にボーナス支給がある場合は、4月や5月を決算月にしていると、ボーナス支給時期と納税時期が重なることになりますし、12月にボーナス支給がある場合は、9月や10月を決算月にしていると、ボーナス支給時期と納税時期が重なることになります。
ですので、ボーナス負担の額が大きい会社では、4月と5月、あるいは、9月と10月を決算月にするとボーナス支給時期と納税時期がぶつかってしまうことになりますから、これらの月の売上げなどによる現金収入があまり見込めない場合などは、これらの月を決算月にすることは避けたほうがよいかもしれません。
在庫高が少ない時期を選ぶ
私の前職であった小売業では、決算月には必ず在庫の棚卸しを実施していました。棚卸とは、会計上の在庫金額と実際に棚卸しで確定した在庫金額の差異を調べるものです。棚卸しをやる際には、店を休業にして、一日かけてやったものです(実際は、準備も含めて数日前から取り掛かっていました)。それほど、棚卸しというのは、決算の数値を確定するために重要なものであり、非常に手間の掛かるものでした。
また、会計上の在庫金額と実際に棚卸しで確定した在庫金額に基準値以上の差異が生じた場合(これを「ロス」と言います)、その原因を棚卸後に徹底的に追求したものです。
このように棚卸しの作業量を考えると、なるべく在庫の少ない時期にやると、その労力は軽減されます。
私が勤めていた小売業やアパレル業界の企業が、2月や8月に決算月を設定しているのは、シーズンが終了し、シーズン品をバーゲン品として処分し、在庫高の少ない時期に当てはまるからなのです。
在庫を大量に抱えるようなビジネスでは、「棚卸しにかかるコストを最小限に抑えるためには何月決算が望ましいか?」ということも考慮してみるべきでしょう。
需要のピークに合わせる
あえて、需要のピークと決算月を合わせるという考え方があります。
つまり、一番売上のボリュームの高くなる時期に『全社あげて今期の予算を達成しよう!』という追い込みのキャンペーンを打ち出すことによって、最大限の売上を確保するべく社員を鼓舞するために決算を利用するという考え方です。
需要がピークになる時期は、追い込めば追い込むほど売上を伸ばせる環境にある時期と言えます。売上が上がり良い決算を迎えられると社員の給料にも反映されることになるので、それだけ社員は頑張るわけです。
また、売上ピーク時の売上金は納税時期までには回収できる可能性が大きいわけですから、資金繰りも楽になると考えられます。
需要ピーク時に決算月を持ってくる典型的な例とすれば、住宅系建設業界が挙げられます。賃貸などの住宅物件の需要がピークになるのは、やはり人事異動の多い時期や卒業入学の時期の2~3月なので、この時期に決算月を持ってくるわけです。
営業社員の士気によって、会社の業績が大きく左右されるような業界は、「需要のピークに決算月を合わせる」という考え方もあるのです。
需要のピーク前に決算期を迎える
前の説明とは逆になりますが、決算月をあえて需要のピークから外して、重要のピーク前に決算期を迎えるという考え方があります。例えば、3月が需要のピークなら、1、2月を決算月にしてしまうというものです。
実は、前述の「需要のピーク時に決算月を合わせる」というのは、節税対策という面では、計画的に対策を打ちにくいという欠点があります。なぜなら、需要のピークを決算月に設定すると、予想した利益が予想以上に大きくぶれてしまう可能性があり、その分節税対策が打ちにくくなるからです。
これに比べて、「3月が需要のピークなら、1、2月を決算月にしてしまう」というやり方は、年度初めに需要のピークが来るわけですから、年度初めに多くの利益が計上されることになり、その利益に対して計画的に節税対策を講じていくことが可能になるというわけです。ただ、決算業務と繁忙期が重なることにもなるので、その辺も考慮しなければならないことにご注意ください。
まとめ
事業年度の決め方には、これといった正解があるわけではありません。それは、上記の5つの観点で何を最優先すべきかは、その会社の実情と経営者の考え方次第だからです。
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