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事業目的の3つの制約

「事業目的」とは、会社はどのような内容の事業で収益活動を行なうのか、ということです。つまり、「何をして儲けようとする会社なのか」ということです。
会社は事業の内容を定款に記載する必要があり、記載した事業内容の範囲でしか商売をすることができません。ただ、定款に記載している事業を必ずやらなければならないという制約があるわけではありません。だから、会社設立後すぐにやらなくても、将来的にやろうとする事業を「事業目的」に加えることはまったく問題がありません。

実は、この事業目的の文言の適否が法務局の登記官によって行われることになっています。会社法施行後の事業目的の文言の適否の判定はかなりゆるくなっていますが、それでも以下に挙げる3つの制約があり、これに反する事業内容は認められないことになります。

  1. 営利性
  2. 適法性
  3. 明確性

営利性とは?

「営利性」とは、利潤を追求することを目的とする事業内容になっているかということです。株式会社は営利法人なので当然のことですね。だから、「社会福祉への出資」「政治献金」などの事業目的は、それによって直接利益をあげ得る可能性がないことから、事業目的として相応しくないことなります。

適法性とは?

「適法性」とは、法律に違反しない事業内容になっているかということです。「麻薬の販売」などは当然に法律違反なので事業目的にすることはできません。これは当たり前のことですよね。
また、士業などの一定の資格を有する個人に限ってその事業を行うことができるとされている事業も、会社の事業目的にすることはできないとされています。例えば、「税務書類の作成業務」などは税理士の専属業務なので、会社の事業目的とすることは税理士法に違反することになり、事業目的として認められません。

明確性とは?

「明確性」とは、その事業内容を他の人が見て、事業の内容が明らかに分かるのか?ということです。事業目的の適否で一番問題になるのがこの「明確性」です。業界内では当たり前に使っているような用語でも、一般的でない用語は「明確性」において否定される可能性があり、登記ができないことがあります。「現代用語の基礎知識」や「イミダス」などに掲載されている用語でしたら明確性があると判断されるようです。

これら「営利性」「適法性」「明確性」のことを事業目的の適格性と言いますが、この適否の最終的な判断は管轄法務局の登記官になるので、事前に法務局の登記官に確認しましょう。では、次に法務局での事業目的の適格性の確認のやり方を説明します。

事業目的の適格性の確認のやり方

法務局には「登記相談窓口」というものがあります。不動産登記と商業登記の相談窓口が別々にあることが多いので、商業登記相談窓口の方に行きます。
ここからは法務局によって違うと思いますが、相談用紙を渡してくれる法務局があります。その相談用紙に事業目的を記入して、相談窓口に提出してチェックしてもらいます。記入する相談用紙がない法務局もありますので、事前に事業目的を記載したものを持参するとよいでしょう。その場で事業目的の文言がOKかどうかを判断してくれます。
法務局で確認すると、相談番号や受付番号を知らせてくれたりしますので、メモしておいて下さい。そうでない場合は、相談に行った日付と相談した担当者の名前を控えておいて下さい。これらを登記申請の際に提出する株式会社設立登記申請書の右上にでもエンピツで記入しておくと、事業目的を登記官に事前確認したことの証拠になります。

この法務局での事業目的の適格性の事前確認をやっておかないと、最終的に登記申請が受理されないことがあります。そうなれば、定款の修正も必要になり、もう一度認証手続きをやり直さなければならなくなります。その場合、認証手続きの手数料も再度公証役場に払わなければならなくなることもあります。

捕捉

また、登記官に確認する以外にも、確実に正しい事業目的を選択する次のような方法もあります。
法務局には、その管轄で登記されている会社の事業目的を見ることができるファイルがあります。ここに記載されている事業目的の中から自分のやろうとしている事業目的と同じようなものを抜き出し、それをそのまま記載すれば、登記官のチェックをわざわざ受けなくても問題はありません。その管轄法務局ですでに登記されている事業目的なので、当然その管轄法務局では「事業目的」としての適格性を認められていることになるからです。

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